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2006.12.16

コメットという飛行機

デハビランド・コメット。
世界最初のジェット旅客機。

画像:Wikimedia Commonsより

第二次大戦中の1942年からイギリス政府によって、旅客機を開発するための委員会が設立され、1949年に同国デハビランド社が世界初のジェット旅客機の初飛行を成功させます。

当時のベストセラーであったレシプロ旅客機「DC-3」と比較しても、客席数は大差ないものの、速度や高度において、大きく水をあけています。

*航空会社により多少の差があります。

主なスペックデハビランド・コメット1ダグラスDC-3(C-47)
運用開始1952年1936年
全長28.61m19.66m
全幅34.98m28.96m
全高8.7m5.16m
乗客数36名21~32名
最大速度724km/h346km/h
最高到達高度12800m8400m
航続距離2414km2420km

時代はジェット機に移行する過渡期でもあり、コメットは大変な注目を集め、世界中の航空会社から注文が殺到。
1952年5月、最初の旅客機がBOAC英国海外航空(英国航空の前身)で就航しています。
我が国でも日本航空がコメットを導入しています。


しかし、デビュー直後からコメットには次々と悲劇が襲いかかることになります。

*1952年10月
BOAC英国海外航空(英国航空の前身)・コメット1(G-ALYZ)
ローマ シアンピーノ国際空港
離陸の際に機を引き起こしすぎたため、尾部が滑走路に接触。
高速のまま滑走路を走り抜け、ぬかるみの中で停止。
機は大破したが、乗員乗客に犠牲者は出なかった。

*1953年3月
カナダ太平洋航空(エア・カナダの前身)・コメット1A(CF-CUN)
パキスタン カラチ
ジェット旅客機史上初の、乗客を巻き込んだ死亡事故。
離陸滑走中に失速して河川敷に墜落炎上、乗員乗客11名全員が犠牲に。
事故調査委員会による主な原因は「機長の経験不足」。
コメットそのものにも離陸時に失速する傾向があると指摘され、改良を施される。

*1953年5月
カナダ太平洋航空・コメット1(G-ALYV)
インド カルカッタ(現コルカタ)ダムダム国際空港
離陸から約6分後、高度1万mに達するところで乱気流に遭遇。
姿勢を回復しようとした操作により機体に設計限度を超える激しい加重がかかり、空中分解。
乗っていた43名全員が死亡。
ここでも機長の判断ミスとされ、コメットそのものの問題が指摘されることはなかった。

*1954年1月
BOAC英国海外航空・コメット1(G-ALYP)
ローマ シアンピーノ国際空港
離陸から約20分後、8000mを航行中、空中爆発。
乗員乗客35名が犠牲に。
当初は爆弾テロも疑われたが、回収した破片などからその形跡は認められず、コメットの運行は一時停止される。
強度不足の疑いのある場所が50ヶ所以上も補強され、2ヶ月後に運行が再開される。

*1954年4月
南アフリカ航空・コメット1(G-ALYY)
ローマ シアンピーノ国際空港
運行再開からわずか2週間後、高度1万mを巡行中、空中爆発。
乗員乗客21名が犠牲に。
イギリス政府はこの日のうちにコメットの耐空証明を取り消す。

イギリス王立航空研究所による徹底的な調査の結果、当時は全く未知の要素であった原因が判明します。


離着陸の繰り返しにより胴体キャビン部が金属疲労を起こした。

地上での与圧試験により、コメットはわずか9000時間に相当する飛行時間で破壊を起こしたのでした。
特に、アンテナ取付部や窓枠などの弱い部分から亀裂を生じており、その亀裂が急激に進展することで機体が分断し空中分解に至ることが判明します。

この当時は、金属の強度に過度な期待があったため、疲労破壊(fatigue fracture)という要因は考慮されていませんでした。
コメットの一連の事故によって初めて事故原因として認識されたのでした。
特にこの事故以降、航空機の開口部に角を設けることは禁忌となります。


さて、その後、デハビランドは新しい安全基準に基づいて、完全に設計変更されたコメット4を発表、北大西洋横断路線の定期便として復帰します。
しかし、その直後、コメットより大型で高速のアメリカのボーイング707が就航、その完成度の高さにより、ジェット旅客機市場を席巻していきます。
既に時代遅れとなっていたコメットの居場所は空のどこにもありませんでした。
コメットは1960年代には生産を中止、1980年代には完全に姿を消しています。

コメットは世界初のジェット旅客機であり、民間機では初めて、酸素マスクなし(完全与圧)で成層圏を飛行するという未知の領域へ挑戦した先駆者でもありました。


なお、コメットを原型としたBAEニムロッドがイギリス空軍に対戦哨戒機として今でも使われています(ただしエンジンは低速巡航に効率の良いターボファンエンジンへ換装されています)。

(あー疲れた、フォローぷりーず>誰にともなく)

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コメント

しのぶさん、Aloha・・!。

スペースシャトルの時も書いたけれど・・、
”人間はヤッパリ空を飛ぶようには出来ていない”
んじゃないか・・・って思っちゃいます。


コメット1か54年しか経っていないのに・・・、
凄い技術の進歩速度ですよね・・!。

金属疲労なんて今じゃ小学生でも知っているだろうけれど、
人間が空を飛ぶ・・・つの時代でも、
イチかバチかの勝負だったんだろうな・・。

ではでは、Mahalo。

投稿: jazz | 2006.12.16 14:47

民間機は守備範囲外の俺ですが、それでもコメットと聞いて「あの事故の多かったやつね」と真っ先に思い浮かべたくらい、この機体と事故の多さは切っても切れなかったのかな(汗)。

対してニムロッドは結構評価の高い対戦哨戒機じゃないかな。アメリカ(海自もだけど)のP-3Cはプロペラだけど、こいつはジェットだしね。あ、プロペラかジェットかってのは対戦哨戒機という性格上は優劣のポイントにならないんかな。
デハビランドというメーカー自体、今は聞かないけどどこかに吸収されちゃったんかな。それこそEF2000ユ-ロ・タイフーンをこしらえたBAE?
そいやカーチスってのも今ないよね。大戦中は次々と戦闘機を開発していったけれど。

あー全然フォローになってないけど、まあ勘弁(笑)

投稿: 三尉 | 2006.12.16 18:29

しのぶさん,こんばんは。
コメットは旅客ジェット機第1号でしたか。
名前からは金魚の「コメット」やテレビドラマ「コメットさん」が
連想されて何となく女性的なイメージが湧いてきますが。
「コメットさん」は私の場合,年代的に大場久美子版ではなく,
九重佑三子版です。・・・しっ,失礼しました。

しかし事故が多かったとはいえジェット旅客機時代の幕を開けるという
立派な役割を果たしたパイオニアだったんですね。
パイオニアとはいつの時代も次世代に身を譲ってひっそりと消えてゆくもの。
そしてコメットは長い尾を引いて夜空に消えましたとさ。

投稿: hideandseek | 2006.12.16 23:23

サイドバーの画像割り込み勉強させていただきました。
今度は左上に画像を割り込ませる勉強させていただきます♪
それでは失礼いたします。。

投稿: 僕。 | 2006.12.16 23:32

 日本航空はコメットを導入してないはず。たぶん事故のためにキャンセルしたんでしょう。ジェット化の初期はDC−8かコンベア880だったと思う。
 日本でデハビランドの旅客機というと全日空のヘロンとかダブがありますね。
 なお、アメリカの対潜哨戒機のP3Cも原形は旅客機で、ロッキードエレクトラという1950年代に初飛行したターボプロップ機ですね。エレクトラは日本の航空会社は使ったのかな。キャセイとかが乗り入れてましたし、ボブ・ディランとザ・バンドが日本に来た当時の古い記事を見て、「あ、エレクトラ」だと思った記憶があります。

投稿: 南郷力丸 | 2006.12.17 02:05

 ところで、航続距離が2414mというのは、保谷庁舎から田無庁舎くらいですね。

投稿: 南郷力丸 | 2006.12.17 23:56

>jazzさん
>>”人間はヤッパリ空を飛ぶようには出来ていない”
>>んじゃないか・・・って思っちゃいます。

うん、私も実はそう思っています(笑)。
やっぱ、生き物って、持って生まれ出た環境から出てはいけないんじゃないかと。
例えば自動車だって、人間の体力からしたらあり得ないスピードで走るし
船も飛行機も、本来はヒトの領域じゃないとこに侵出してるじゃないですか。
だから、ちょっとした間違いで簡単に命が奪われるような事態になるんですよね。

だけど、たとえ命を賭けてでも未知の領域を冒険するのも
また人間ならでは、なんだろうなあと。

>>凄い技術の進歩速度ですよね・・!。

ほんと、20世紀は技術のビッグバン(笑)時代でしたよね~。


>三尉
南郷さんがTB送ってくれた記事に詳しいことを書いてくれてるよ。
デハビランドは、そのとおり、現BAEシステムズだそうです。
やっぱコメットの事故歴は有名なのね~。

運行してる機の絶対数がまだ多くなかったせいもあるんだろうけど
現代の航空機と比べて、事故の頻度は実はそんなに多くないんだよね。
ただ、今の事故は多様性があって、原因も様々なんだけど
コメットの場合、一連の事故がほぼ同じ原因だった、ってのと、
いかんせん、初のジェット旅客機、ってことで
何もかも手探り状態だった、というのがつらいところよね・・・。
うがった見方をすれば、コメットの事故があったおかげで
現代の航空機はより安全性を高めることができた訳で。
こうして事故を経験してきたことで今の安全があるんだろうなあと。

>>プロペラかジェットかってのは対戦哨戒機という性格上は優劣のポイントにならないんかな。

うわ・・・・今、思い出した!
こないだの入間航空祭で、私は写真撮ってこなかったんだけど
P3-C(だったかな?)が展示してあって
「うわ、今どきプロペラだよ、だっせ~」とか思ってたんだけど(汗)
哨戒機ってプロペラが主流だったのね・・・。

カーチスって紅の豚しか知らない・・・。
って、Wikipediaで調べたら、部門売却、合併とつらい時代が続いて
最後にはボーイングに吸収されたみたいね・・・。

いやマジでありがとう、やっぱ持つべきものは
戦闘機オタの友達、ですなっ(笑)。


>hideandseekさん
あっ!hideandseekさん、心配してたんですが
少し落ち着かれましたか・・・?

私も「コメット」と聞くと、どちらかと言うと「コメットさん」を思い出します。
私は大場久美子ですが(笑)。
乗り物は女性名詞で扱われることが多いんで
やっぱり女性的なイメージは合ってるのかも知れませんね~。

>>しかし事故が多かったとはいえジェット旅客機時代の幕を開けるという
>>立派な役割を果たしたパイオニアだったんですね。

本当におっしゃる通りだと思います。
それまでは酸素マスクのいらない低空をプロペラでバタバタ飛んでいたのを
一気に成層圏まで行くわけですから、
文字通り、前人未踏のチャレンジを果たしたんですもんね。
ただ、やはり人間にとって空を飛ぶということは至難の業であり
航空技術の歴史は、そのまま事故との戦いの歴史でもあるんですよね。
コメットの悲惨な事故があったからこそ
次に生まれた飛行機たちは、それを足がかりにできた訳で。

>>そしてコメットは長い尾を引いて夜空に消えましたとさ。

うーん、切なくて詩的ですねえ・・・。
こうして先人たちの屍を越えて、私たちは前に進んでいくんでしょうか。


>僕。さん
初めましてっ!
記事を参考にしてくださって嬉しいです~。
ぜひぜひ!あれこれトライしてみて、できあがったら紹介してくださいねっ。


>南郷さん
あ、日本航空はコメットを注文しただけで終わっちゃったんですね。
日本も注文してたって話は聞いたことがあるんですが
本体が来る前に事故が連発しちゃったんですね・・・・。
ヘロンとかダブはプロペラなのね。

そういえば、三尉もコメントで書いてたんだけど、
対戦哨戒機にプロペラの航空機が多いのって、なんか意味あるんですか?

>>ところで、航続距離が2414mというのは、保谷庁舎から田無庁舎くらいですね。

・・・で、電動車椅子より走らないわ・・・(汗)。

投稿: しのぶ | 2006.12.18 00:44

 プロペラと言っても「ターボプロップ」という一種のジェット機ですから、ガソリンで動くレシプロ機じゃないです。
 高空、高速には向かないけど、低速域で燃費がいいんで、長時間の対潜哨戒という用途にゃ向いてるんでしょう。

投稿: 南郷力丸 | 2006.12.18 01:47

南郷博士に補足。
相手は潜水艦。超音速で移動するヤツじゃないくて狭いエリアをピンポイントでソナー落とし込んで位置を特定していくわけだし、通常潜水艦ハンティングは制空権の確保された領海内でやるわけだから、速度の出ないプロペラ機の方が有利でしょう。大石英司の小説によるとエンジン1発に絞って12時間滞空、とか出来るようだし?寝泊りや食事、WC設備も完備でしょう。
あと、P-3Cだと足の長い対艦ミサイルのハープーンなら搭載、運用出来るよ。日本は国土や領海の広さに比べると極端に対潜哨戒機の配備数が多く、対潜作戦能力は世界一じゃないかと言われてます。
ってコメットに全然関係ないけど(笑)

あ、コメットってうちの金魚も「コメット」だよー。

投稿: 三尉 | 2006.12.18 07:58

>南郷さん
ふーむ、だけどニムロッドはターボファンエンジン、なのね。
イギリス海軍が使ってるってことはやっぱプライドなのかな。


>三尉
うん、プロペラ機の方が速度が遅い分、
ゆっくり旋回しながら哨戒できるとこが便利、ってのは分かったんだけど、
ではなんでイギリスはニムロッドを採用してるのかな、って。
まあ、単に性能だけでなく、いろんな「お国の事情」があるんだろうけどね。

>>あ、コメットってうちの金魚も「コメット」だよー。

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